巫女と贄

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「ここはどこですか?」 「それはわからない、僕は扉の向こうにある自分の部屋にしか行けないからね。 君に会った時は命令を受けてあの場所に行っただけなんだ」 男性は持っていた本を閉じ、椅子から立ち上がる。 改めてその姿を見ると本当にこの白い部屋とは真逆の黒い色に包まれている。 黒。黒。黒。黒。黒。黒。黒。 あの時の夜と同じような…吸い込まれてしまいそうな…黒… 「そうだ…ほ、他の皆さんは!?」 スズランは隊舎が襲われた事を思い出し、皆の安否を聞く。 すると男はさらっとこう告げた。 「死んだと聞いたよ」 「え…」 スズランの思考が止まった。 視界が歪み、少しふらつく。 「君のとこの隊長も善戦はしたらしいが、魔力限定状態で僕の仲間三人相手に勝つのは無理だったらしい…と…もう聞いてないようだね…」 男性は立ち上がり、扉に向かう。 途中でちらりとスズランを見たが、すぐに扉へ向き直した。 「また来るとするよ」 そう言い残して男性は扉の向こうへと去っていった。
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