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「いた…!」
少しの間止まっていたスズランは頭を押さえて苦しそうな表情になった。
「どうかしたのかい?」
「あ、いえ…大丈夫ですよ…」
ユメがスズランの顔を覗き込むと、無理して作ったような笑顔を向ける。
「でも苦しそうだ…」
「本当に大丈夫です…ただ…
ユメさんの姿が誰かと被って見えたような気がして…」
「……」
「誰と被ってしまったのか…その人を思い出そうとしたら急に頭が痛く…でも、もう大丈夫ですよ!」
「そうか…」
そう言ってユメは向けられたスズランの笑顔を見て、微笑み返す。
「じゃあ僕はそろそろ自分の部屋に戻るとするよ…」
「はい、わかりました!
また来て下さいね、ユメさん!」
「今日持ってきた本は置いていくから読みたかったら好きなだけ読むといい…それじゃ、また…」
ユメはそう言い残し、部屋をでていった。
「……うっ…」
ユメが出て行った後、スズランはベッドに倒れ込んだ。
「痛い…!痛いよ…!エリス…」
その名前が誰なのかわからないまま、スズランは助けをこうように呟いた。
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