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「どうしたんだい?何か――」
「夢を…見たんです…」
ユメの言葉を遮り、スズランはそう言った。
「夢…?どんな夢だい?」
「皆で朝食を食べているんです…
六人で…笑いながら…」
嘘をついた。いつの間にか目の前からいなくなったシオンの事は黙っている。
「それは…楽しそうな夢だね…」
ユメの表情が変わる。
そして寂しそうな笑顔を見せながら椅子に座った。
「でも、見たくなかった…」
「何故だい?」
「だって…もう叶う事が無いじゃないですか…」
そう、スズランは完全に思い出してしまった…シオンに導かれ、ソルの、ルナの、ライズの、レインの、そして…エリスの事を…
「…そうかもしれないね」
スズランの頬を涙が伝う。
その五人が死んだと聞かされた事も思い出したのだ。
「叶わない夢を見るのに…意味はあるんでしょうか?」
スズランは問い掛ける。
自分にはわからない答えを、ここに来てから縋り続けたユメに対して…
「………あるさ」
「え?」
ユメが答えたと同時にスズランが顔をあげる。
椅子に座っているユメは優しく微笑んでいた。
「その夢の中で描かれていたのは、自分が自分でいられる本当の幸せの形なのだから」
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