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「不便だよなぁ、魔術師ってのはよ…口がきけないとほとんどの術が使えなくなっちまうんだから…
敵に接近させない、は魔術師の基本だろ?」
「ぐ…!『ウィン――」
「駄目駄目」
またファルスの顔を殴るライズ。
術の名称が言う事が出来ず、ファルスは術が発動できない。
そのかわり、ゴキ、という音がファルスの口元から聞こえてきた。
「あ゛…!か…!」
「あ~…顎かな?まぁ、戦闘に怪我はつきものだからなぁ…」
ライズはファルスの手を離す。
ファルスはその瞬間、ライズから離れた。
「ほら、離してやったんだから頑張れよ?」
「(駄目だ…!喋れん…!)」
ファルスはすぐに反転し、ライズから逃げ出した。
「何だ?逃げるのか…少しは骨のあるやつかと思ったら…がっかりだ…」
ライズはテンペストを持ち、テンペストをファルスのほうに向けた。
「【アリエル】」
「(冗談じゃない…!何だあの力は…!化け物じゃないか…!)」
ファルスは口と鼻から血を流しながら全速力で逃げている。
「(他の皆には悪いが、流石に命を失うのはごめ――!!)」
ファルスはそこで気が付いた。
自分の左腕が無い事に。
「(な…んで…?)」
そしてグシャリ、という音ともにまた一本。また一本無くなっていく。
【グルルル…!】
「(何だこの音は…!)あ゛…!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
そこからファルスの姿は消え、ファルスの血とその血が滴る獅子の口だけが残った。
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