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「(負けた…)」
自分を喰い殺そうと向かってくる雷の獅子を前にして最初にスズランはそう思った。
「(私はやっぱり…一人じゃ何も変えられない…!)」
スズランの瞳から涙が流れる。
恐怖ではない。自分の無力さと自分の決めた事を貫けない二つの悔しさで。
「(ごめんなさい…シオンお姉ちゃん…!)」
開かれた獅子の口が目前に迫った時、スズランは目をつぶった。
「【トリックルーム】!」
「【黒刃・爪】!」
しかし、その獅子はスズランに届く事は無かった。
轟音とともに黒い箱と黒い斬撃によってトールの術は相殺された。
「え…」
スズランは目を開ける。
入ってきたのは二つの後ろ姿。
「ユメ…さん…」
ユメともう一人…その人物を見た瞬間、またスズランの瞳から涙が零れる。
わかっていたのに、嬉し涙が止まらない…生きていると知っていたはずなのに。
「すみません…後はお願いします…ソルさん!」
「ああ、よくやった、スズラン…
後は任せろ!」
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