募る、膨らむ

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橘さんは一瞬びっくりしたように目を丸くして、残念そうに笑って下を向いた。 「・・・そっか。まぁ嫌ならしゃぁねぇよな。 成瀬、タイプじゃねぇ?」 「タイプじゃないとか・・・そうゆうんじゃなくて・・・」 「?じゃあ何で?」 何にも考えずにまっすぐな瞳で『何で?』って聞いてくる事に、妙に腹が立つ。 橘さんに悪気はないのに。 これじゃただの八つ当たりだって分かってるのに、イライラが止まらない。 「何でもです! ってゆーか、橘さんに言われたくないです、そうゆう事!」 「どういう意味だよ?」 「とにかく橘さんには言われたくないんです!」 「は?何だよそれ!?女にフラれたばっかの奴にそんな事言われたくねぇ、って?」 「違いますっ!」 「じゃあ何でそんな事言うんだよ!?」 「好きだからですよ!!」 ――ハッ あたしは漫画みたいに、慌てて自分の口を手で強く押さえた。 そんな事をしても、勢いで吐き出してしまった言葉は戻らないと分かっていたけど。 何かせずにはいられなかった。 何かしてないと、驚いた顔であたしを凝視する橘さんの瞳と、嵐のようにあたしを襲う後悔の念に耐えられなかった。
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