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(いったい、誰の悪戯なんだ)
宗太郎には、まったく身に覚えが無かった。誰かと何か約束をした覚えも無ければ、そんな悪戯電話をされるような覚えもない。
(毎晩こんな事をされたら、仕事に集中できないんだよ)
明日の仕事も早いんだ。毎晩、こんな悪戯に付き合っている場合じゃない。
この夜、宗太郎は携帯電話の電源を切っていた。
午前0時になって何も起こらないのを確認したら、これから毎晩ぐっすりと眠る事ができる。
しかし、問題の時間になった時…。
プルルルル…。
電話の呼び出し音が鳴った。携帯電話の着信音ではなく、部屋に設置してある電話の呼び出し音だった。
宗太郎の背筋に冷たい物が走った。
プルルルル…。
恐る恐る受話器を手に取ると、宗太郎は震える手で、それをそっと耳に寄せた。
『約束…覚えてる…?』
蚊ほどに小さい声だがはっきりと聞こえた。…女の声だった。
「うわぁ!」
宗太郎は思わず電話を部屋の壁に投げつけると、そのまま布団の中に潜り込んだ。
(いったい、俺が何の約束をしたって言うんだ…!)
枕を胸に抱え、ガタガタと震えながら、宗太郎は眠りに落ちていった…。
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