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今月に入ってから毎晩、午前0時に携帯電話の着信音が鳴っていたが、この日は違った。
宗太郎が午前0時を確認するや、携帯の着信音の変わりに、
ピンポーン。
と、部屋の呼び鈴が鳴った。
普段なら、こんな夜中に誰が来たのだと不審に思うのだが、この日の宗太郎は違う。
訪問者が誰なのか分かっているからだ。
「はい。…いま開けるよ」
古いワンルームマンションの玄関の扉は、キイィと音をたてて開いた。
懐かしい彼女が、そこにいた。
純白のウエディングドレスに身を包んだ亜希子が、そこにいた。
「宗太郎…!」
亜希子は見るからに驚いていた。
宗太郎もまた、真っ白なタキシードに身を包んでいたのだ。
「やっぱり覚えていたのね」
「まあね」
思い出した…と言った方が正確かも知れないが、今それを口にするのは無粋だった。
「近所の式場からレンタルしたんだ」
そう言うと宗太郎は笑ったが、亜希子は下を向いたまま笑わない。
不思議な事に、宗太郎と同じように亜希子も成長し、大人の女性へと変貌していた。もしかして、本当に生きて戻って来たのでは…?と期待したが、やはりよく見ると亜希子の身体は透けていた。…間違いなく幽霊なのだ。
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