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あれから14年ー…
「弟の名前まだ思い出せないのか?」
呆れ顔で俺を見て親友の関根は、新しい缶ビールに手を伸ばした。
「まだ飲むのか?
しょうがないだろ…両親が別れたのは八歳だったし。
一緒に暮らしたのも三年間しかないんだから」
俺は関根の射るような眼差しから目を逸らす。
「もちろん飲むさ。今日は泊まらせろよ?
でもなぁ…
義理の弟だと言っても、名前も知らないなんてなぁ」
関根は知り合った頃からのボヤキを繰り返す。
「名字もわからないんだろ?」
「あぁ…俺の父と弟の母さんが再婚したから。
向こうの名字は知らない」
「意外と複雑だよなぁ…」
関根がソファーに体を預け、しみじみと呟く。
俺はその言葉に苦笑するしかない。
俺の父が弟の母と再婚したのは、俺が五歳の時。
その三年後に二人は離婚した。
だから俺と弟には血の繋がりはない。
そしてなぜか名前を忘れてしまった。
『忘れない』と約束したのに。
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