冬休み

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「まぁ、考えてわかんないのはしゃあねぇべ? お前も飲めよ」  関根はほらっと缶ビールを投げて寄越し、ビールを煽った。 「お前飲みすぎじゃないか?」  関根の前には既に大量の空き缶が転がっている。 「まぁいいじゃないか。 今日から冬休みなんだし」 「まぁな… あ、いっとくけど、お前そこで寝ろよ?」  関根の座るソファーを指差すと、奴は眉根を寄せた。 「えー! 一緒に寝ればいいじゃん。 ダブルベッドなんだし」 「はぁ?   お前は女か!」  俺はしかめっ面で言い返してやる。  酔った関根は甘えるから鬱陶しい! 「ひどい…あいつとは寝るのに…」 「あいつ…?」  デカい図体をして甘えた声を出す関根の言葉に眉をしかめる。   「楓っちだよ! お前あいつとは一緒に寝てるんだろっ!」  だから…そんな潤んだ目で見るなよ。  今にも泣き出しそうに訴える関根に 俺はほとほと呆れ果てた。 「あいつとお前を一緒にするな」  ピシャリと言って毛布を放り投げると、関根はおとなしくなった。 (あれ…?)  見れば奴は既にソファーに横たわり、毛布を抱えて寝息を立てていた。  180センチの体格の体を窮屈そうに丸めた姿。 (やっぱり可哀想だったかな)  チラリと同情心が芽生えたが、いつもの事なのでほかっておく。  12月の寒い時期だろうと、暖房の入った部屋は暖かい。  風邪を引く心配はないだろう。 .
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