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(楓か…)
関根があれ以上、追求してこなくて良かった。
リビングの空き缶を片付けて、寝室に入ると、数年前に買い替えたダブルベッドに潜り込む。
楓の残り香が鼻孔をかすめた。
昨日も泊まっていったので、枕には楓の香りが染み付いていた。
三年前に知り合った楓とは、未だに「先輩後輩」の域を出ていない。
たまに俺のウチで二人で飲んで、泊まっていく。
ただそれだけ。
関根がその事を知ってるのには驚いたが、もしかしたら酔った勢いで俺が話したのかもしれない。
楓と一緒に寝るのは、楓が一人では眠れないから。
楓の俺に対する想いに特別な物なんてないのだ。
俺が弟を可愛がったように。
楓は兄のように俺を信頼してるだけ。
全く別の想いにも関わらず、俺の中では楓と弟がいつしか重なっていた。
俺の大切な人だからだろうか。
そんな事をつらつらと考えているうちに眠ってしまった。
その日は二人の夢を見た。
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