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俺があいつに初めて会ったのは、春の風が吹き荒れる4月半ば。
所属する温泉サークルの新入生歓迎会の時だった。
普段はサークルの活動以外には参加しない俺が、歓迎会とはいえ、飲み会に行ったのはただの気まぐれだ。
「おぅ、千葉!珍しいなお前が来るなんて」
「たまたまバイトが休みだったからな」
1人で飲んでいた俺の隣に、いつの間にか友人の関根がいた。
「今年も女子はあまり入らなかったな」
関根が周りを見渡しつつ嘆息した。
温泉サークルの部員は圧倒的に男子が多い。
「別にいいんじゃないか?一緒に入れるわけでもないし」
「お前には夢がない!女の子との湯けむりの露天風呂!男のロマンではないか!」
酒の力を借りてまくし立てる関根に、数名の女子が軽蔑の視線を向ける。
「お前…恥ずかしくないのか?」
「何が…むにゃ…」
呆れ顔で言ってやると、関根は俺の肩にもたれ掛かって眠ってしまった。
(幸せなやつ…)
へらへらと笑いながら寝息を立てる関根は、きっと女の子と『湯けむり露天風呂』にでも入っているのだろう。
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