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「楓、着いたぞ」
窓に体を預けたまま、眠っている楓を揺り起こす。
楓の寝顔の可愛さに、思わず吸い寄せられる。
なるべく平静を装い、楓の瞳を覗き込んだ。
「う…ん…」
「大丈夫か?」
ゆっくりと開けた楓の瞳と、視線がぶつかる。
すると、楓は顔を真っ赤にして横を向いてしまった。
「楓?」
「なんでもない…行こ?」
楓は気まずそうに微笑むと、車を降りた。
ショックだった。
俺を避けてるのは今のでわかったが、なぜだろう。
俺の気持ちがバレたのだろうか。
この旅行で告白をしようと思っていたが、無理かもしれない。
楓に嫌われる事が一番怖かった。
「先輩?」
振り返り俺を呼ぶ楓の笑顔は、いつもの柔らかな表情なのに。
楓の一番近くにいながら、今は誰よりも遠くに感じた。
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