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楓がポツリポツリと話し出した。
時折、涙を堪えて言葉を絞り出す。
「俺の初恋は男で…名前も忘れちゃったけど、強くて優しくて。
いつも俺を守ってくれた、お兄ちゃん」
「お兄ちゃん!?」
まさか、実の兄なんてこと…ないよな?
「お兄ちゃんって言っても、血は繋がってないから大丈夫だよ」
俺の心配は、楓の微笑みに消えた。
「よかった…」
「そのお兄ちゃん、先輩に似てるんだ…」
え…?
「正義感が強くて、優しくて…」
「そんなに似てるのか?」
胸騒ぎがした。
「うん…年も近いよ?」
まさか。
「俺にも弟がいた…」
俺は確信を込めて、楓を見つめた。
涙に濡れた、つぶらな瞳。
こんなにも二人は似てた。
そして楓もそれを感じていた。
俺の昔年の思いと三年間の想いとが、重なり合う。
「俺達、兄弟だったんだ…」
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