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「う…んっ…」
最初は抵抗した楓だったが、固く閉じた唇を舌先でくすぐるとゆっくりと唇を開いた。
楓の唇は思ったより柔らかく、俺は包み込まれているような錯覚に陥った。
たどたどしく応える楓の反応に気を良くし、体に手のひらを滑らせると、
「んっ…」
ピクリと細い体が跳ねた。
「怖い?」
「初めてだから…」
「え…?」
「初めてなんだ…」
真っ赤に染まって、微かに震える体で、その言葉が嘘じゃないとわかる。
「優しくしてやる」
一度キツく抱きしめ、楓の体を起す。
「わっ…」
いつもの様に体を掬いあげ、ベッドに下ろした。
「好きだ…愛してる…」
「ー…っ!
俺も…」
楓の瞳からまた涙が溢れた。
それを唇で啄むと、また楓は涙を流した。
「泣き虫…昔から変わらないな…」
止まらない楓の涙に、昔を思い出し、頬が緩む。
「だって…せんぱ…お兄ちゃんが…」
「先輩でいいよ。
まぁ、“お兄ちゃん”っていうのもそそるけどな」
クス…。
俺の軽口に、ようやく楓に笑顔が戻った。
泣き笑いの表情が男心をくすぐる。
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