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「助けて頂きありがとうございました」
彼、時田楓(トキタカエデ)は、とりあえず落ち着こうと入ったファミレスで深々と頭を下げた。
「いやいいよ…男で少し驚いたけど」
「俺…こんなんだからいつも女の子に間違えられてて。
男だとわかってもなかなか諦めてくれないんです…」
彼は悔しそうに言うと、ぽってりとしたピンク色の唇を噛んだ。
マフラーを外した細い首。
コーヒーカップを掴む長く綺麗な指。
男心をくすぐる様々な彼の仕草を目の当たりにし、納得した。
「そうか…ところで君、同じ大学だよな?」
「え…?」
「温泉サークル」
「あっ…」
俺もファミレスに入るまで気がつかなかったのだが、彼は俺の後輩だった。
「自己紹介してただろ?」
新入生歓迎会の冒頭での挨拶で、顔を覚えたのだ。
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