相方以上、恋人未満。 白黒

2/2
245人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「チャチャ上ぇ…」 「うっさい。ネタを持ち出すな阿呆が」 ―ウチの相方、朝からご機嫌ナナメってます。 もうほぼ直角に近いん…あ、それじゃあナナメじゃないわ。 事の発端は、井上が見ていた携帯のニュース… "NONSTYLE石田、熱愛!" 「…なぁ井上ぇ」 井上も知ってはいたオレの彼女が…… マスコミに、ついに報道されましたわー… そのニュースを見た井上は、うん、それはそれは機嫌悪くなった。 「…まだ続いてたんか、あの子」 「うん、おかげさまで」 「おかげさまでちゃうわ阿呆が」 「井上ぇ…;」 「っジブンよぅ付き合えてたな。俺に嘘ついとった?」 「ついてないわ!」 「なら何でこんな事になるん!!」 楽屋に声が響き渡る。 と、井上がボロリと涙を溢した。 「Σわ!わっ、井上!?;;」 「ホンマ…信じられんわお前ぇ…っ人の気持ちも知らんと、遊んでいたんか!」 「遊んでなんかないわ!本気や!!」 「その女にか?…なんちゅう野郎や!」 「ちゃうわ!お前や!!…オレにはお前だけなんやっ、井上!!」 堪らなくなって肩を抱き締めたら、何だかいつもより冷たく…遠く感じた。 こんなに近いのに、心が何処かに行きそうで。 ―どっちの心が? オレは…そうや、オレは… 「…もう、知らん。相方はお前だけや。これからもそれだけは変わらん」 ――どっちも、失うのが怖かっただけなん。 だから、どっちにも、何も、出来なかっただけ… オレは…なぁ、違うんや、井上… 「井上…オレは、」 「相方や。相方……ただ、それだけや。石田」 どんっと押された胸は、やけに苦しくて。 さっきまで泣いてた井上は、もう泣いてなくて。 今度は、オレが泣いてしまった。 「石田…」 「…井上……オレは……」 「…男なら、ビシッとせんかい。いつまでも甘えんなや」 そう言って井上は、ケラケラと明るく笑った。 オレは何も言えないまま、彼女からの着信を告げる自身の携帯をぼんやりと見つめていた…
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!