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高橋は指に挟んでいたゴキブリを隙間から中へ落とした。保管し、成熟させるためだ。ポリバケツは高橋にとってゴキブリの飼育庫であり、食料を貯蔵する場所でもあった。高橋にとってゴキブリは食料と同義なのだ。
高橋は片手にビニル袋を持ち、おもむろに隙間からポリバケツへと腕を入れた。ゴキブリを潰さない程度の力で掌一杯に掴み、手際良くビニル袋へと入れる。中で成熟したゴキブリは通常の1.5倍程に肥えていた。二十匹ほど取り出したところでポリバケツの蓋を閉め、クローゼットへと戻した。
一通りゴキブリを入れ終えた高橋は、夕食を作るためにビニル袋を持ってキッチンに立った。まず、天麩羅鍋に油を張り火をかけ、天麩羅粉をまぶしたゴキブリを数匹落としていった。
数百度という高温の中では流石のゴキブリも生きることが出来ない。一瞬足が動いたように見えたが、ほぼ即死だろう。数十秒で小麦色に揚がったので、頃合いを見計らって取り出す。
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