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冷や汗が背中を伝う。
俺は男から目が離せないでいた。男の帽子に隠れた顔を凝視する。
シルクハットを被った男も微動だにしない。
異様な空気で乾き切った喉に、唾液が滴下した。その時、男がふいに顔を上げた。
「……!!」
…………気が付けば俺は、元来た道を駆け戻っていた。
男が顔を上げた時に会間見えた眼が、瞳が寸分も狂わず、“俺を殺す”といっていた。
それを感じ取った瞬間、今まで棒切れのようだった足は、歯車が噛み合ったように俺を駆け戻らせていたのだ。
「はぁ…はぁ…。」
必死だった。
今までに無いほどに、足が千切れるかと思うほど、走った。
街中の街路を縫うように走る。
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