教会のショゴス~「呼び出し」より~

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********************** 「ワタシの名は“黒星”でやんす!そしてワタシのお店“玩具箱”へようこそ!」 カウンターの上の古びた服を着込んだ小狡そうなネズミは跳び跳ねながら歌うように自己紹介をした。 穴蔵の中は想像より遥かに広いようで、カウンターの向こう、視線の彼方まで商品と埃に埋もれた棚が拡がっていた。 「ようやく“迷い人”様とリンクが繋がったでやんす…!どれだけ苦労したこと…むぎゅぅ…」 言い終わる前に誤先生の手に捕まえられた黒星は窒息しそうになりながらジタバタともがき手を弛めてくれとジェスチャーをした。 「欲しいモノは決まってるんだ…!」 誤先生が早口でメリルに聞いた品の名を告げると、黒星はもがき頷いて穴蔵の隅にあるガラスケースを指さした。 「けふん、けふん…。全く乱暴でやんすね…。お客様にもマナーというものが…いや…あの…お急ぎでやんすね。」 睨みつけられた黒星は首を引っ込めてえへへ、と媚びた笑いをした。 ガラスケースの中には大きな美しい宝石の結晶が4つ並べられていた。 ガラスケースにはしっかりと錠前がかかっていた。 「どうしたら良い?」 「簡単でやんす!“玩具箱”の取引は“金貨”でお支払い頂くことになるでやんす。」 「“金貨”とは何だ?時間がないんだ、欲しいモノはくれてやる、急いでくれ!」 思わず力が入り、握りしめられた黒星が悲鳴をあげる。 「むぎゅ…あいたた…そんなに急がなくても“本”の中とは時間の流れが違うんで……いやお急ぎでやんすものね、この帳面にお名前を…。」 黒星は上目遣いでカウンターの上の古びた帳面を指さした。 **********************
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