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朝焼けの中に佇む影は、どうにか人の形を留めているようであったが、そこにいる誰もが大僧正が既に何か別のモノへ変貌していることを悟った。
『ニオスカッカ…にお越しイタダクとは、マコトニ光栄シゴク。』
大僧正の落ち着き払った声に耳障りな金属質の声がかぶる。
「卿下は…ずいぶんな変わられようですなぁ。」
黄金タイツの指先が困ったように自らの頑丈な顎の無精髭をなぞる。
『クックック…このヒヲドレダケ待ったことか…。』
人影のぬらぬらした半魚人の頭はそのままだが、身体のシルエットが波打つようにゆらいでいた。
「その身体…手遅れであったか…!」
音もなく千切れた鞭を引き上げながら執事は怒りに震えていた。
「我が騎士団をどうされた?」
太い眉毛をしかめながらグレゴリィが尋ねると、
『クヒヒヒィ…こいつラのコとか!?』
大僧正がその千切れたローブを脱ぐと…そこには地獄が現れた!
最早大僧正の身体は存在せず、ぬめねめとした何十という触手が半魚人の頭から生えて蠢いていたのだ!
しかもその触手の隙間から助けを求める表情のまま溶けていく無数の顔…!
その中には先ほどみのり達を心配してくれた若い騎士の顔もあった。
「ひどい…!」
「何と酷いことを…!」
『カーッハッハッハッー!ナニがヒドイモノカ!“神”と一体にナレタカレラほどシアワセナコトガ…』
ズバァァッ!
言い終わる前にその身体を無数の闇の鞭が切り裂き巻き付き上空へ切り飛ばす!
「舞散れ…ナインテイルスロウ!!!」
吹き飛ばされ瓦礫の空に拡がったタコのようなその身体目がけ、金色の稲妻のようにグレゴリィが飛びかかり貫いた!
「黄金飛龍翼穿!!!(ゴールデンドラグーンランス!!!)」
明け昇る朝日の中、魔物の身体はバラバラに弾け飛び黒い雨となって瓦礫に降り注いだ。
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