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帳面に名前を書きこむと、ガシャリと音がしてポケットに何かが“現れた”のがわかった。
急に重くなった上着のポケットに手を突っ込むと硬いコインに触れた。
黒星が耳をピンと立てて目を輝かせる。
「これは…。」
ポケットの中にあったのは大振りの金貨だった。それも一枚や二枚ではなくポケットいっぱいにぎっしり詰まっていた。
「そそそそんなに!大当たりでやんすね!」
目を輝かせ涎をたらしそうな勢いで喜んだ黒星は、観察されているのに気づき手で口をぬぐってすました顔に戻った。
「…こほん。ええとつまりそれが“金貨”でやんす。」
「…そんなにコレが欲しいのか?」
金貨を一枚鼻先に鼻先に突き出すと、
「ほっ…ほしほほほしいに決まってるでやんす!なぜなら、商人だから!」
誤先生は奪い取ろうとする黒星から金貨を取り上げると再び睨みつけた。
「これはなんだ?欲しいなら答えるんだ。」
「ダンナそりゃ殺生な…。わかるでしょう…ワタシも永いことそれにありついてないんでもうペコペコなんですよ…!」
「食べ物…には見えないが。」
黒星は、ニヤリと厭らしく笑うと言った。
「それは“プレイヤー”様の“魂の結晶”でやんすよ。あっしはそれを喰らって生きてるのでやんす…!」
早く、早くよこせとばかりに跳び跳ねて催促する黒星。
だが…。
「やはりな…。約束だからこれはくれてやる…が、もうひとつ聞きたいことがある。」
黒星は哀れを誘うほどに惨めな顔で誤先生を見上げた。
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