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見回すと、皆もう余力が無いのは見てとれた。
カビビのエンジェリックコートは破け、立ち上がるのもおぼつかない。
執事とグレゴリィ伯爵は特に酷い状態で、早く救護隊を呼ばなければ危険な状態だ。
不思議なことにみのりは軽傷を負った程度でまだ動けそうだった。
ペーターとみのりに素早く指示を出し、誤先生とメリルは★SWATとショゴスの後を追って走り出した。
「すまない…ボクに禁術を使う力が残っていれば…。」
メリルは自分の唇を噛んだ。
「メリルのせいじゃないさ。」
黒星の話では、“歪み”によりどこかで進むべき道が狂ったのだという。
耳に先ほどの話が蘇ってくる。
「あの化物がこの金貨を欲しがるか、でやんすか?…うーん…まあ、あっしと同じような存在であれば皆さん金貨は欲しがるでしょうね…。
その金貨は、“カタチあるもの”なんでやんす。その金貨を得ることは、力を得ること以上にワタシども“カタチなきもの”に意味を与えるんでやんす…これはまあダンナの聞きたいことではないのかもしれませんが。」
黒星はニィと笑うと続けた。
「およそエルアークに産まれたもので、ソレを欲しがらないヤツなどおりません。
かりそめの生を受けた者には、“魂”は眩しすぎるんでやんす…。」
「その黒い蛸とやらも、歪みによって自分が何たるかを知ったのでやんすね…。そう考えると、本の住人であっても価値を知っててもおかしくはないでやんす。」
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