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教会の庭に、花が咲き乱れていた。
美しい花壇に水をやる司祭は誤先生を振り返り、穏やかな微笑みを浮かべて話始めた。
「ある日少女が私を訪ねてきて、熊の縫いぐるみを持って聞くのです。」
「“この子が喋れるようになったらいいのに”と。」
「私は答えました。」
「“神は全てのものに生命を与えています。聞くことができなくとも、その子にも心があるのです”と。」
「後に私はそれが真実であり、嘘でもあることを知ってしまいました。…いや、知ったつもりになっていたのでしょう。」
「この世界が、私も含め全てが…虚構であることを彼等に教えられ、私はそれを信じました。」
「この世界の全てを知り超える方法がある、と…。」
司教は遠くを見つめた。
「しかし今はわかります。それすら真実ではなかった。
魂は、確かにここにあるのです。」
にっこり笑う司祭はまた花に水をやり始め…
その姿がぼやけ、花瓶に水をやる★SWATの姿に重なった。
気がつけば、いつの間にか見慣れたベッドの上にいた。
「先生!」
★SWATと目があった。
「やった、先生が目を覚ましたよ!」
どやどやとみのりが、カビビが病室へなだれこんできた。
すぐに病室は笑顔と安堵の声で溢れた。
春の暖かい風にカーテンがひるがえり、窓際に置かれた花瓶の花は、教会の庭に咲いていた花だった。
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