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みのりを抱えたまま膝をついたカビビの前に現れた男の名は、グレゴリィ・ニオスという。
━黄金貴族。
人々は彼のことを皮肉をこめてそう呼ぶ。
かつてデモノイドに蹂躙されるまで、フィッツェランド市は彼が支配していた土地だった。
貴重な鉱山を擁するこの地域に代々施政者として君臨してきたニオス家は莫大な富と栄光を誇った一族であったが、先のデモノイドによる侵略でその全てを奪われてしまっていた。
一人生き残ったグレゴリィは
フィッツェランドを離れ魔防門等で恨み重なるデモノイドと対峙する毎日だというが…。
「アルフレッド、彼等に毛布を与えろ。」
「早速。」
アルフレッドと呼ばれた執事が命令を兵士に伝えると、金糸の毛布がカビビ達に渡された。
「落雷がおかしいというから来てみたのだぞアルフレッド?」
「はておかしいですなぁ…。確かに妙な魔力を感じたのですが。」
執事がにこやかな表情のまま周囲を見渡すが、瓦礫の山が拡がっているばかり。
先程までそこにうずくまっていたはずのメリルの姿は既になかったが、執事の細い目はその場所を捉えていた。
「おいお前たち。」
濃い眉毛がカビビを向いた。
「はっ…。」
「ここで何があった。」
「………。」
メリルの事を言うべきだろうか…?
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