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「よくわかりません。」
ここは無関係を通すか。
みのりも無事のようだし、メリルには姿を消さなければならない何かの事情があるのかもしれない。
ビシィッ!
伏せた顔の側で小石が弾ぜた!
「閣下の質問には、素直に答えよ。」
見上げると執事が上からカビビを覗き込んでいた。
手には何の武器も持っていないが、この執事がした何かが小石を弾いたのは明白だ。
穏やかな顔のままだが、細い目だけが冷酷な色を映していた。
「我輩が質問しておるのだ、顔を上げい。」
主人の黄金眉毛がカビビに命令する。
「………。」
立ち上がった弾みでみのりの美しい髪がその豊かな胸で流れ、地面にほどけた。
「!?」
黄金眉毛は「あっ」という口の形のまま凍りついていた。
肩がわなわなと震え、まるで人形のように血の気が引いていくのが見て取れた。
「…?“若”?どうされました…?」
主人の急変に、執事は禁じられている二人きりの時の呼称で呼んでしまったが本人はそれどころではなく全く気づいていなかった。
「……?」
「…うつくしい……。」
「は…?」
執事が聞き返すがやはりグレゴリィの耳には全く入らなかった。
そう!
黄金貴族グレゴリィ35歳!
彼は今恋の嵐に襲われていたのだ!!!
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