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「ぐぁっ!」
何度目だろうか
剣士は目の前にいる魔術師の放つ衝撃波をまともに食らって地面に倒れていた。
「何回言ったら分かる?私は村の人に危害など加えてはいないの」
そんな様子を見ながら悠然と佇む魔術師は言った。
「何処にそんな証拠がある!
それに実際に目撃したと言う人がいるんだ!」
剣士は何度目かも解らない同じ答えを返す。
「・・・そう、なら」
パチン
魔術師が指を鳴らすと、剣士は更に飛ばされて魔術師との差が開く。
「そのまま帰っていただけませんか?
そろそろ手加減しませんよ?」
剣士は剣を杖がわりにして立ち上がり。
「上…等……だぁ!」
そう叫ぶと気力を振り絞って魔術師のもとへ一気に距離を詰め、剣を降り下ろさんと
パチン
「あ…れ?」
降り下ろした剣士の腕は、剣を握っていたはずの右腕の肘から先が無くなっていた。
「腕がっ!?俺の腕がぁ!?」
その異変に気づいた剣士は混乱しながら傷口を握りしめ…
パチン
「がぁぁっ!」
今度は左足が。
パチン
「ああぁあぁああ゛っ!」
今度は脇腹。
パチン
魔術師が指を鳴らす度に剣士の身体の一部が弾け飛んでいく。
―
― ―
― ― ―
「だ、助げで…」
五体の大半を失った剣士が必死に魔術師へと助けを請う。
そんな様子に溜め息を漏らす魔術師。
「…幾ら」
「…へ?」
「貴方は幾らで雇われたんです?」
「5000!5000Gだっ!」
「そうですか」
「な?言っただろ!?助けてくれっ!」
肘から先を失った右腕を魔術師へと伸ばす剣士。だが
「誰が助けると言いました?
貴方は5000Gで私を殺すよう頼まれたんでしょう?
そしてそれを引き受けた。
貴方は5000Gを手に入れるために命を懸けたんでしょう?
なのに助けてくれと貴方は仰る。それも殺せと言われた相手に。
お門違いもいいところです。そのまま死んじゃってください」
伸ばしてきた腕を無視し、背を向けて歩き出した。
尚も「てめぇ!騙しやがったな!殺してやる!」等と喚く剣士を放置して魔術師は奥へと消えていった。
暫くして剣士の声が聞こえなくなると、魔術師はゆっくりと息を吐いた。
「あの村は何年も前に滅んだのに…幽霊にでも雇われたのかしらね」
特にオチはありません。あしからず。
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