黄色の鉛筆

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『ソラ』 その日は、朝からムシャクシャしていた。   何があったというわけでもない。寝覚めが悪かったのだ…… そう言い聞かせ、車のアクセルを踏んだ。   どれだけ走ったのか。ここはどこなのか? 見知らぬ景色に、ハンドルをきった。 目に入った駐車場に車を突っ込み、僕は降りた。 眩しい…… 思わず目を細める。 青かった。 間違えて絵の具をこぼしたかのように、そこには青しかなかった。 綺麗だと、そんな素直な感情が沸き起こる。 こうやって空を見上げるのは、何年ぶりだろうか? 思わずそんなことを考え、苦笑がもれる。 気がつくと、僕は再び車を走らせていた。 朝のあの嫌な気分は不思議と、もう無い。 まるであの雲ひとつ無い空のように、一点の曇りも無く心は晴れ渡っていた。
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