桃色の鉛筆

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『キャンドル』 ゆらゆらと揺らめく炎。   今日はラズベリーの甘酸っぱい香り。   ほんのちょっと背伸びをしたような気分で、彼女は彼の腕の中にいる。   「まだ、起きてるの?」   耳元で囁きながら、彼が優しく頭を撫でる。   「うん。なんか幸せだなぁって」   そう彼女は、はにかむ。   「何言ってんだよ。これから嫌ってぐらい幸せにしてやるんだから」   そう彼が言う。   どちらともなく、照れたような小さな笑い声をこぼし、口付けを交わした。   「早く寝るんだよ」   まるで、子供に言うかのように笑い彼は炎を吹き消した。   微かに甘い香りを残し、闇に包まれる。   「おやすみなさい……」   昨日まで恋人だったあなた、そして今日から私の旦那様。
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