白色の鉛筆

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『僕の在る場所』   そこは真っ白だった。 何も無いただ白い空間。 触れている足の裏の感触だけが、妙にリアルで気持ちが悪い。   どうしてここにいるのだろうか? 自分は死んだのか? 次々と疑問は浮かぶが、答えは見つからない。    恐怖が背中を静かに押す。 たった一歩。踏み出した足元から波紋が広がる。 波紋は風となり、偽った白い世界を剥がしていく。 あまりの風の強さに、思わず顔を庇い目を強く閉じた。 悲鳴にも似た風の叫びだけが、通過していく。   全てがおさまり、再び静寂が訪れる。   僕はゆっくりと目を開き、言葉を失った。   ――空。   それ以外に表現のしようがない青と白が周りを包む。   「俺は、死んだのか?」   呟いた言葉が、どこまでも不気味に反響していく。 終わりはない。なんて不安定で、不確かな世界なのだろう。 そう見下ろした雲の向こうには、俺がいた。 それは、世界を呪い叫ぶ己の醜い姿。 そして思い出すのだ。   あぁ、俺は新しい世界を望んだのだ。 人も草木も動物もいない、生命のない世界を。誰もが俺に触れない、ただ一つの世界を……   そこには誰もいない。 ただ僕が在るだけの世界。
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