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「部長はどうする?」 課長が聞いている。部長は腕組みしてしばらく悩む。 「ライトは俺んだぞ」 てやさんが口を挟む。 ライトがしたかったのかてやさん。間違いなく打順は8番がいいって言うんだろうな。 1塁。ファーストにする、と部長が言う。 あまり走らなくてよさそうというのが理由のようだ。 「では私はレフトにしよう。秘書殿はどうだ?」 課長が俺のとなりにいる男に話を振る。 てかもうセカンドとサードしか残ってない。ふと秘書と俺の目が合った。 「サードどうすか」「セカンドしなよ」 発言が被った。 しかし、結果は丸く収まった。 俺がセカンド、秘書はサード。 こうして全員の守備位置が問題なく決まった。 え~、あれ?…リリーフがいないんじゃない?いくらなんでも投手2人はキツイだろう。 その時、グラウンドの向こうから走ってこちらへ向かってくる人影が一つある。 「すんませ~ん、遅れた~」 えー。あれ、ボインじゃね? ボインとは俺と最も交流が深い奴なんだが、そんなことはどうでもいい。何でここに来てるのかという方が重要だ。 「…お前、なにしに来たの?」 目の前で全力で息を切らしている男に俺は声をかける。 「何しにって。そりゃお前、野球だよ、や・きゅ・う」 「んなこた聞いてねえよ。何でここにいるのか聞いてんだよ」 「俺が呼んだんだよ」 大声を出す俺の背後からてやさんが声をかける。 俺は、えっ、と短い声を出して振り返った。 「キッシーはまだ入社して浅いし、他の社員とそこまで中が深いわけじゃないだろう。彼ならお前と交友も深いし、楽しく出来るんじゃないかって呼んだんだ」 「そゆこと。俺はお前のお守りだよ」 ボインはやっと呼吸を整え、嫌味ったらしく俺に言う。 開いた口が塞がらない。よりによってこいつとは。他にもっと誰かいたんじゃね? こう、事前に声かけておくとかさ、俺にも選ぶ権利があったっていいだろう。 ため息をつく俺に、おい、いくぞ。という声がかかる。 見れば、その方向から白球が飛んでくる。 俺はとっさに身をかわしながらも捕球する。 ボインから投げられたボール。そいつを受け止めた。 「おい、早く返せよ」 ボールを握り、ボインの方を見る。 脇でてやさんが笑う。もう一度、深いため息を俺はつく。 そしてゆったりとしたフォームでボールを投げた。 その口元は自然に緩んでいた。 まあ、あれか。 おそらく、何だ。 それは、こういうことで、何というか、そういうことなんだ。
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