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2ヵ月後。
痛烈な打球がサードライン際を襲う。
これに秘書が間一髪飛び付き捕球。すぐさま二塁へ送球する。俺はボールに追いつく右足でベースを蹴って体を反転。そのまま一塁へ。
投じられたボールは体を一杯に伸ばした部長のミットへ納まる。5-4-3の完成だ。
守備は人並みに出来るようになった。
守れるようになったということは、どうにか試合が出来るということだ。
打つ方は…
まあ、何とかなるだろ。
どうせGMのシステム自体であまり打たねーし。
「よーし、みんな集まれ~」
てやさんが集合をかける。
「うむ、みんななかなか板についてきたじゃないか。こりゃ全国制覇も、あっちゅーまだな」
何いってんだこのオッサン。
全く無茶な事を言っているのだが、ニコニコしながら話すその顔を見ていると、それが一概に不可能ではないと思えてきてしまうから不思議だ。
簡単に言うと、言葉に力がある。
「という事は、そうなんですね」
大帝が言う。
俺にもその言葉の意味は理解できた。
てやさんは軽く頷きながら言う。
「試合しよう。今から」
はやっ。
吹きそうになった。
「相手の人達はもう来てるみたいだね」
ベイさんが三塁側のスタンドに目を向ける。
釣られて俺も見る。
いた。
おお、みんな見たことある人達だよ。
暁さん。
GMの重鎮。暁笑劇場の座長でもある。
最近はピンク劇場が規制にかかって傷心らしい。
とむお師匠。
別に何を教わったわけではないのだが、師匠なのだ。
とむお語という特殊な言語を使用する習性がある。
伊勢丹さん。
少々顔色が冴えない様子。
明らかに病んでいる。
そんな状態で何しに来たのかわからないが、そっとしておこう。
えーりん。
…えーりんか。
野球すんのか…。てかできんのか…。
と、まあどうやら『こだふれ』中心のメンバーのようだ。
「おい、お嬢がきてるぜ」
ボインが肘で俺の脇を突く。
えーりんは満面の笑みでこちらに手を振る。
彼女の愛嬌は最強。
得意技は携帯水没。
やりにくいことこの上ない。
意識しないでおこう。
俺は笑いの形を作り、少し帽子を伏せる。
「暁~てやくん、調子はどうだい」
「試合には なりますよ(^w^)」
ほほう、と暁さんが軽く驚く。
そして我がコンチェルトの面々を見渡す。
一瞬、猫目に視線が止まり、次に大帝を見た。
「暁~なるほど、やるね」
暁さんは、にんまりと笑った。
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