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そんな涙の少女に気付かず俺はバラバラになったチョコをある元あった形へと近づけていた。
「ほら!見……」
出来たーー!!と胸を張り、箱を女の子の顔に近付けて初めてその女の子の様子を知った。泣いている………
「おい!泣くなよ。」
そう言ってポケットからハンカチを出し涙を拭き取ってあげる。
「ありが……とう。」
でも、下を向いたままだった。
「……」
クイッ!と顔を上げさせてもう一度女の子に見えるように箱を上げる。
「形、わかったぜ!ハートだ。」
女の子はニコッと微笑んだ。
「パズルみたいで楽しかったな。味も良かったし、やっぱりこういう味のほうがいいよな。」
俺は小学校内で貰ったたくさんのチョコの味を思い出した。まだ小さい年齢だから親が手伝ってるって雰囲気の味がほとんどだ。中には味を見なくても充分伝わる飾り気のあるものも……それに比べて、このハートチョコは本当に誰かにあげたくて一人で頑張り作り上げられたって感じの味のみでまったく疑いようもない。好きになりそうだ。
「あの…ごめんね。元の形のままであげられなくて、……その、初めてだったの。渡して食べてもらったの。……バラバラだけど。」
女の子は本当に嬉しく話しかけてきた。
「何言ってんだよ。形が何だったって、気持ちがあればおいしいんだよ。」
俺も満足し答えた。そしてドライバーを見上げる。
「……ふたりとも、本当に怪我はないんだね。さっきはごめんね、じゃあ、おじさんは帰るけど、いいね。」
そう告げてドライバーは立ち去って行った。
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