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よく見れば砂利も、枯山水と見間違えるほどの手入れが施されている。
正直ここに長居する理由はないので、少し急ぎ足で賽銭箱の前に向かう。
そして賽銭箱まで来たところで、ポケットから輝一に貰った五円玉を取り出し、下手投げで放り込む。
金属と木材がぶつかった時特有の音を鳴らしながら落ちていく五円玉。
しっかり入ったことを確認したところで、鈴を勢いよく鳴らし手を二回叩く。
「明日のテストを
受けなくてすみますように」
…………。
勿論返答など有るわけはなく、沈黙が神社全体を包み込む。
――十秒ほど経って一息就く大和。
そして回り右をして出口に向かうべく一歩を踏み出す。
だがその時、一陣の突風が木の葉を舞上げながら、まるで大和が神社から出ることを拒むように正面から大和に吹き付ける。
そして風が吹き抜けた直後、囁くように聞こえた。
『待って……』
「……へ?」
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