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声に反応して周りを何度も見渡す。
だが、人影や気配もない。
元々幽霊などの非現実的なものは全く信じていない大和。
空耳と確信したところでまた歩き出す。
『待って』
声が聞こえるが、無視を続ける大和。
そして、鳥居を潜ろうとしたところで、さっきまでの小学校低学年くらいの少年ではない声が聞こえた。
『待ちなさいって言ってるでしょ!』
「どわぃ!?」
奇抜な声をあげながら尻餅をつく大和。
それもそのはず、今の声は大和の母の声だった。
『へへ、驚いたでしょ?』
声の主の姿は見えないが、無邪気に笑う少年の姿が頭に浮かび上がる様な声のトーンで笑い声をあげる。
「な、なんでそこにお袋が居るんだよ!」
呂律の回らぬ舌で、精一杯の言葉を発する大和。
今の大和は、誰が見ても焦っているという感想を漏らすしかないほど焦っている。
『残念でした。ここに君のママはいませェん。今のは僕の声だよ』
そう言ってまた無邪気に笑う声の主。
だが大和は、いきなり死んだ魚の様な目をしたかと思うと、ゆっくりと立ち上がり天を見る。
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