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キングコングという名でも全く違和感のない姿をした巨大な二足歩行のこの生物は、餌を見付けたと言わんばかりに胸を丸太の様な腕で何度も叩いて音を発する。
ドラミングの音を聞いて正気に戻った大和は、勢いよく立ち上がってそのキングコングの逆方向に全速力で走り出す。
だが簡単に逃げられるはずはない。
キングコングの雄叫びが聞こえたと同時に、大和の何十倍もある大きな岩が轟音と共に大和の前方数メートルに着地し逃走を遮る。
振り返ってみるとそこには既にキングコングがいた。
そしてキングコングは両手をハンマーの様に握り締め、勢いよく降り下ろす。
(駄目だ、足が動かねえ)
降り下ろされる腕を見上げながら、静かに悟る大和。
(ハハ、走馬灯って……本当にあるんだな。今までの思い出がどんどん駆け巡りやがる…………もう……楽しかったことしか思い出せねえや…………)
そして静かに目を閉じる。
『大丈夫、君は死なせない』
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