未知

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 音に反応して正面を見る。  するとそこには、数分前、嫌と言うほど見た黒い剛毛に包まれた岩のようにゴツゴツとした手が姿を表した。  咄嗟に逃げる為に百八十度方向転換をする。  だがそこには二つの巨大な壁。  二匹のキングコングが大和を見下ろしていた。  その余りの恐怖に腰を抜かして地面に座り込んでしまう。 「……今度こそ……終わった」  もう一度周りを見渡してみるとそこには、合計八匹のキングコングが大和を取り囲む様に佇んでいた。  そして次の瞬間、斜め左のキングコングが低い唸り声から一転して力強い雄叫びをあげながら大和に向かって走りながら腕を振り上げる。  姿は目でしっかりと追えるが状況が状況、抜けた腰は微動だにせず回避も儘ならない。  そして大和は死を悟ったかのようにゆっくりと目を閉じて己の死を待つ。  ――だが、一向に自分の五体を潰し死へと誘う一撃は来ない。  しかしその代わりに、耳に入っただけで体を痺れさせる様な数発の銃弾を発砲したと思われる轟音が熱帯のジャングルに鳴り響いた。
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