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目線の先には黒雲。
だが雲と言うには不自然な点があった。
それはスピード。
雲はあそこまで早く動かない。
それは、じっと見ていてやっと動いていることに気付く雲とは違い、蠢きながらどんどんこちらへ向かって来ている。
大和は目に意識を集中させる。
「む、虫!?」
その声に少女も咄嗟に右を向く。
すると少女の表情もみるみる真っ青になっていく。
「しっかり捕まって!」
「どうした……んぎゃあァァァ!」
急な加速に振り落とされそうになる大和。
だがここで普段のサーフィンが役に立ち見事にバランスを保つ。
「あのォ、もうちょっとちゃんと言ってくれます?」
「うるさい」
初めての返答が『うるさい』。
打たれ強い大和にため息がこぼれる。
それにしてもどんどん離れていく黒雲。
助かったと呟きながら胸を撫で下ろす大和。
そしてもう一度黒雲を見た時不自然な光景が大和の目に入る。
「な……なにあれ……」
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