45人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
鈍い音と苦しそうな声と共に、一メートル程後ろに吹き飛ぶ。
だが、まるでいつものことの様に軽くお尻の埃を手で払い、平然と立ち上がる大和。
そしてゆっくりと少年の方に歩み寄る。
そして熱い握手を交わす二人。
端から見れば熱血スポ魂マンガにも見えるこの景色。
だがその本質は全く違うものだった。
「毎度毎度どういうつもりですか? 先輩」
中学生にも見える少年の手を、渾身の力で握り締めながらそう告げる大和。
顔は痙攣しているかの様にひきつっている。
だが少年はそんな大和に反して、涼しげな顔をしている。
「なんつうか……お前の後ろ姿はオレの闘争本能をくすぐるんだよ。蹴ってくださいみたいな感じで」
小さな先輩は、そう言って満面の笑みを浮かべる。
彼の名前は土師 祭(ハジマツリ)
黒髪黒目の高校三年生、十八歳。由緒正しき葬式屋の一人息子で大和も所属するサーフィン部の副部長。
悩みは身長が一メートル六十センチしかないことだ。
最初のコメントを投稿しよう!