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風が吹き荒れている。
空には重たい雲がかかり雷が今にも鳴りだしそうだ。
土は灰色で荒れた大地が広がり、かつて森だったであろうそこは枯れた木々が不気味に生えている。
地の果て。その灰色の世界に4つの人影があった。
「ソフィア、あとはお願いします。」
漆黒の長く美しい髪と白銀に輝く瞳、透き通るような白い肌。絶世の美女と言っても過言ではない美しい女性がアイボリー色の髪の女性に言った。
「わかったわ。
2人のことは任せて。
私が責任持って守るわ。
…だから、あなたも無事でいて、メデューサ…。」
その言葉には答えず
「クレア。
ここでお別れです。
彼女に着いて行って下さい。
大丈夫。シンも一緒よ。」
そう言って5・6才の少女の頭に優しく手をのせ微笑みかける。
「…母さま。」
少女は表情の乏しい顔で黒い瞳をメデューサに向け呟くとぎゅっとメデューサの黒いタイトドレスを握った。
メデューサはその手をゆっくりと外して優しく握り、しゃがんで目線を少女に合わせて微笑みかけながら
「大丈夫。見えなくても私はいつもあなたたちの傍にいるわ。」
そう語りかける。
そして、
「さぁ、もういきなさい。
シン、クレアを守って下さいね。」
「はい。
メデューサ様もご無事で。 …約束、守って下さいね。」
最後の方を彼女にしか聞こえないように言った。
シンと呼ばれた少年は黒い髪と瞳をしていて整った顔立ちをしていた。
彼女を見つめるその瞳はどこか悲しげに揺れていた。
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