『 月の魔法と、夜のお化粧。 』

かぐや姫のため息。

まん丸の満月が僕の前方にあった。
ちょうど高い建物がない景色。
月は誇らしげにキラキラしていた。

光らない星の筈なのに、それは凄く綺麗に輝いていて…白雪が何かを呟いてる間中、僕は行き先を考えずにソレばかり見ていたんだ。

「あんたねぇ。幾ら何でも、あんな……」

文句を言いながら月を見上げた白雪も、その大きくて美しい姿に言葉を失ったみたいだった。

あそこに行ってみたい。

たぶん、家出なんて二度目はない貴重な体験だと思う。
だからこそ、いつの間にか僕はあそこを目指してみたくなっていた。

例え彼女に、現実味がないって笑われたとしても。