ぷろろーぐ

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「本当に、本当に今すぐ獄門島に連れて行ってくれるんですか?嘘付いたら針千本飲むなんて生温い罰ゲームなんかじゃあ済ましませんよ!」 「フッ、俺は紳士だからな。一度約束したことを破ったりはしない。」 日芽はしきりに確認し、連呼する。ゴクモントウ、と。 獄門島。 その忌まわしい名前を聞いたことのある読者もいるかもしれない。 それはかつて金田一耕助が訪れた島であり、奇妙な巡り合わせによっておぞましくも奇妙で、無気味な殺人が行われた場所である。 その獄門島へ連れて行ってやると話が来たのだ。日芽がここまで興奮するのも仕方がないだろう。 と、 「日芽ちゃん、」 気配も無く現れたのは美貌の少女。名は佳代と言う。 それはまるで猫の如く静かな…いや、佳代は猫になどには到底出来ない芸当を、つまりドアを開けずに通り抜けて来たのだ。 佳代の洋服の裾は引きずりそうな程長く、縁には真っ白なレースをふんだんにあしらった緋色のドレス。腰までなびく滑らかな髪。目立つ恰好と容姿を持っているのに、佳代の存在感は完璧な無だった。 それもそのはず。 佳代は、幽霊なのだ。 先の上背村の件にて知り合い、事が済んだ後もこうして日芽の側にいる。容姿はせいぜい15、6だが、実際は何十年もこの世を見てきた"化物"。 そんな佳代だからこそ日芽のことが心配でたまらなかったのである。 日芽と佳代について、そして上背村で起きた恐ろしい事件については、それもまた今度おはなしするとしよう。
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