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日芽はもの凄い形相ですごむ。が、本当のことを言ったとてどうせクリスティは信じてくれないだろう。クリスティは結構なリアリストだ。
非科学的で目には見えないモノだが、信じろ。そんな事は刑事と言う職についている人間には特に難しいのかもしれない。
日芽は取り敢えず、精神病院の紹介状をびりびりに破いてゴミ箱にポイした。「君はせっかくの好意を捨てるのか!」と言うクリスティの言葉も無視した。残念だが全てありがた迷惑だ。
そんな下らないやりとりを交わすうち、腕時計の針は1時を指していた。今日中に出発して島に着きたいと考えていたクリスティは焦る。東京からその島まで、ゆうに4時間はかかるのだから。
日芽に支度をするよう急かす。
十数分後、日芽は自室から荷物纏めを終えて出てきた。少ししわくちゃなセル地袴に下駄、斜めにかけ大きめな白のショルダーバックと、いでたちはいつもと代わり映えしなかったが(強いて言うなら、撮りまくる気満々に首にかけて構えているデジカメくらいだ)。
玄関に向かう足は軽やか。いつになく、日芽ははしゃいでいた。
そんな日芽を見てクリスティも佳代も自然に頬か緩む。二人とも幼稚園児を遠足に連れていく保育士さんの気分だった。
「いざ、獄門島へ!!」
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