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窓の外を見ると、陽が沈み、すっかり暗くなっていた。時計を確認する。美紀が出て行ってから三時間。俺は急激に不安になった。喧嘩をして出て行っても、だいたい、一、二時間くらいで帰ってくる。たまに三時間を過ぎることもあるが。その日はやけに不安に襲われた。俺は不安を打ち消すように、他のことをやり始める。そうだ。録画してあったビデオを見よう。毎週、必ず録画して美紀と一緒に見るお笑い番組。
「アハハ」
俺はビデオを再生する。
「ハハハ……」
四角い箱の中でいつものように芸人達が、コントをしている。
「ハハ……ハ……」
俺と美紀が大好きなコント。いろんなコントの中で、このコントは特に好きで二人で見ていつも大笑いしている。
「ハ……ハ……」
しかし、この日はそのコントが酷く滑稽に見え、全く笑うことができなかった。
俺はビデオデッキの停止ボタンを押す。テレビから発せられていた音は消え、部屋は静寂に包まれた。俺はぼーっとする。つまらない。クソッ──
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