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変身
朝起きたら鳥になってた。
真っ白な羽根を目一杯動かして空を飛んでみた。
ちょうど雲ひとつない青空でとても気持ちが良かった。
しかし、太陽が真上に到達する頃、胸の辺りを鋭い痛みが走り、そのまま墜落した。
血を流しながら落ちていく瞳に最後に映ったのは、いやらしく笑う人間だった。
目が覚めたら魚になってた。
半透明のヒレを目一杯動かして海を泳いでみた。
ゴミも淀みもない綺麗な水でとても気持ちが良かった。
しかし、キラリと光る水面に近づいた頃、喉の奥に鋭い痛みが走り、そのまま上昇した。
息が出来ずに必死に喘ぐ瞳に最後に映ったのは、いやらしく笑う人間だった。
――――瞼を開ければいつものベッドの上で、全てが夢だったのだと悟った。
結局自分は何ものにもなれず、いやらしく笑う人間でいるしかないのだと、悟った。
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