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「モモちゃんも二十歳ね…早いわぁ」
しみじみとキッチンで洗いものをしながら語る母を見て、溜め息が出た。
「母さん、いつまでもそれ言ってるよね。どれだけ経ってると思ってる?」
私が成人式を迎えたのは今年の始め、四月には一つ歳をとり大学三年生になった。
そして今は十二月
クリスマス・イヴである。
礼斗や充、千夜子と同じ大学に通い始めて三年。
今年三月には礼斗達が卒業し
来年は、四年生。
一年って早いなぁと
最近つくづく思う。
高校生と大学生の時とは、時間の流れが違うのではないかと思ったぐらいだ。
「…だって、モモちゃん。二十歳なのよぉぉ」
「なっ…何!?」
栄子はエプロンで顔を覆い隠し泣き出した。
二十歳に相当な思い入れでも
あるのかしら?
「ったく、騒いでると思ったらなに母さん泣かせてるんだ、モモ?」
突然帰って来た充が、リビングの入口でこちらをじっと見ていた。
「兄ちゃん…私が知りたいよ!ってか、仕事は!?」
「外回りのついで忘れ物取りに来たんだ」
充は出版社に就職した。
今まで私達に言ったことはなかったが、礼斗の母・静香の事を見ていて憧れていたんだって。
『俺も静香さんみたいにバリバリ仕事したいね』
なんて、毎日大変そうだけど
とても充実しているみたい。
「ミツく~ん、モモちゃんが…」
今度は充に泣きついている。
二十歳の誕生日の時は、こんなのじゃなかったと思ったけどなぁ…成人式も喜んでいたけど普通だったし。
クリスマスで感傷的になってるのかな?
…違うか。
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