社の主

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夕陽の赤に陰を落とす木々の枝が侵入を警戒するようにざわりざわりと身体を揺する。 この様な存在は何処へ言っても嫌われるものだ。人間でも無い、でも同じ貌をしている。 『至極耳障な‥。』 心というのは形無いものだが、それ故に正直だ。心がありありと表れたこの音は耳障りで仕方がない。 しばらく歩くと、明らかに手入れなど誰もしていないと思われる神社が見えた。真っ赤な鳥居の向こうの廃れた廃屋にも、まだ微かに神がいた匂いがする。 此処にいた神も居場所を追われ消えてしまったのだろうか‥こんなにも暖かい心を持った神だったのに。 その時だった、 『!』 主さま――‥ 男と女の声、ぼんやりと光を放つお社の中から聞こえる二人分の重なる声、それと同時に社へ近付く身体を容赦なく斬り付けてくる。 社の扉に手を掛けたのと同時に首に手を掛けて砂の上に引き倒す二つの人影。力を込めて来るのは明るい短髪を一つに結った男、まだ見た目は16、7だろうか。隣のショートヘアの少女とは兄妹かなにかか、良く似ている。 『っ、女の扱いがなって‥無いようだな。只でさえ童貞の相手は疲れるというのに。』 「「何者だ、」」両側からのスピーカー状態で聞こえるまだ幼い声。しかし明らかに殺気だった声と先ほどまでの異常な威嚇。まるで、この鳥居を潜った者は全員敵と見なすかのようで。 『ずいぶんと忠誠心が高いようじゃ。偉いぞ、主がいなくなっても神殿を守るとは。』 「黙れっ‥‥、」 挑発的な言葉に兄(仮)の方は猫のように髪を逆立たせギリギリと喉元を容赦なく締め付ける。妹(仮)の今まで感情の見えなかった瞳にも凍てつく様な光が灯った。
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