昨日の女

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俺は思わず木の陰に隠れたが、少しだけその女の顔が見えた その女は泣いていた その泣き顔があまりにも綺麗で、儚くて、愛しいとさえ思った 女の姿を見たのは一瞬だった でも俺にはそれで充分だった 酔っ払っていた俺の思考は尋常じゃなかったかもしれないけれど、生まれて初めて他の人間を愛しい、守りたいと思えたのだから 今まで他人を本気で愛したことのない俺にとって、これはとんでもない出来事だった
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