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夜のとあるビル、そこには下から聞こえる人の声と月明かりしかなかった。
そんなビルの屋上で一組の男女が静かに月を眺めていた。
「愚かな人達、今自分達が危険な状況にあるのに、それに全く気付かないなんて……」
女はうっとりとした目で月を眺めながら呟いた。
「……むしろ気付いてない方が幸せでしょう………気付いても抗う事は彼らには不可能ですから…」
男もそれに答えるように呟いた。
女は視線を月から目の前にいる男の背中に移した。
「……でもそれは残酷でしょ? だって、気付くのはその瞬間なんだから」
女な服の袖からナイフ取り出し、静かに男に近付いた。
女が男のすぐ傍まできた所で男は呟いた。
「……私は味方です…………それと、その殺気の大きさでは私以外の方にも気付かれますよ………」
男の言葉に女は小さく笑うとふわりと飛び上がり男の目の前にあるフェンスの上に着地した。
「残念、でも私が貴方に従っているのは貴方が強いから。どんな時でも、どんな場所でも、どんな状況でも私より強くないといけないの。だから貴方は一生私に狙われる運命なの」
女の言葉に男は無表情で女を見る。
「………貴女の異常な執着心には興味が湧いてきますよ」
「私は貴方の強さに興味があるわ。あと私と同じ部分も……」
女は笑みを浮かべながら体をビルの外に傾けた。
「じゃあ、またお話ししましょう」
女の体は宙に浮き、そして消えていった。
「……悲鳴はない…………ただいなくなっただけ……………なら、普通にいなくなればいいのに………」
男はそう言い残しビルから消え去った。
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