君と薔薇のヴァイオリンソナタ

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  その言葉で、はっと我に帰る。 何やってるんだ俺はここで… よく見れば彼女は、 普通の人間だった。 気付かなかったのが不思議だが 制服姿の女子高生だ。 某有名私立女子校の制服。 何処ぞのお嬢様だろうが、 茶髪の巻き毛に短いスカートは 日本にならどこにでもいる 普通の女子高生だ。 何が天使だ、どうかしてた。 ──ただ、やはり目は作り物のように綺麗だった。 「…なんですか?」 彼女がまた口を開く。 またはっとした。 俺は人が嫌いだ、 ことさらに女は嫌いだ。 遅れて、まじまじと彼女を 見つめていたことの 羞恥心が襲ってくる。 ここはさっさと退散しよう。 だからつい、苦し紛れの言い訳のように、余計な一言を 言ってしまったんだ。 「…へったくそ」  
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